平成25年9月12日  最近のロシア事情

取引商社駐在員リポートを抜粋して掲載させていただきます。



6月
ロシア / プーチン大統領の離婚が正式に発表された。いろいろその理由が取り沙汰されているが、真相は誰も知ることはできないだろう。側近の間では、この離婚により、プーチンへの既婚女性の支持が低下することで、プーチン政権の盤石さが揺らぐのではないかとみる向きがある。トラと闘った勇ましいプーチン、上半身裸になり馬に乗ったプーチン……。だが、強さを誇示してきたプーチンに最近老化の影を見ているのは私だけだろうか。マッチョなプーチンが公の場所で涙を見せることはこれまで考えられなかった。それが演技なのかどうなのか。
涙と言えば30数年前に公開された「モスクワは涙を信じない」というソ連映画があった。「泣いたところで誰も助けてはくれない」との格言をもとに、あまり西側の人たちには知られていなかったソ連の市民の姿を生き生きと描き出した作品だった。自分の身は自分で守るしかない、為政者へ過度な期待(いやその欠片程度でも)することの愚かさ。当時の政情下でここまで突っ込んで描いたソ連映画は珍しかった。
勇ましいプーチンがいかに涙を流し、「人間プーチン」を強調し市民に媚を売ろうとしても、誰も彼の涙を信じない。泣いたところでどうなるものでもなし。反プーチンデモの主催者と目されたNPO法人の規制の動きを見ると、「とうとうプーチンもやきが回ったな」と思うこのごろである。
さて離婚したプーチンに再婚はあり得るのか。5年ほど前、アテネ五輪 / 新体操金メダリスト・カバエワとの間でスキャンダルが起こった(彼女はロシア最大の与党「統一ロシア」の下院議員でもある)。いまだにその関係が続いていて、再婚を考えているのかどうか知る由もない。当時このスキャンダルをすっぱ抜いたタブロイド紙は、突然資金難を理由に休刊した。この過程で何らかの政治的な圧力がかかったことは皆分かっている。逆に当時は、まだ勇ましいプーチンがいた。政府に批判的なジャーナリストや、実業家が次々と不審死していった時代。プーチンの「老化」とともにその数は減ってきたが、最近ベレゾフスキーがロンドンで不審な死を遂げた。エリツィン時代から政商として名を馳せ、プーチンの大統領就任にも大きな役割を果たしたキング・メーカー。やがて、力をつけたプーチンにロンドンへと追われた。
「老化したプーチン」がいいのか「勇ましいプーチン」がいいのか、いずれにしてもロシアでは、プーチンの話題に事欠かない。


7月
先日、某紙でロシア市場における日本の酒類メーカーの奮闘ぶりが報道されていた。その内容をかいつまんで言えば、日本の酒類メーカーのロシア市場での存在感が高まっており、例えばアサヒビールの2013年のロシアでのビール販売数量は前年比15%伸び、サントリーのウイスキー販売が1.6倍に増える見通し、というもの。日本の厳しい消費者に育てられた 「日本の味」 が、世界最多のアルコール飲酒量を誇るロシア国民に受け入れられつつあるということか。
アサヒは20年ほど前から主力のビール 「スーパードライ」 の輸出を行っていて、その昔現地で、私はロシア製のまずいビール (言葉は悪いがウマの小便のごとく) ではなく、日本製もしくはヨーロッパのビールを飲むようにしていた。ロシア製は、味もさることながら品質管理面、衛生面で不安を覚えていたからだ。今、ロシア製ビールは結構美味しくなってきたが、市民の間にはまだまだ品質面の信頼性を勝ち得ていないだろう。この傾向は当面続くと予想されているので、アサヒだけでなくキリンも、輸出ではなく、ロシアのビール会社に委託して現地製造を始めている。
20数年前、ゴルバチョフ政権下で 「禁酒令」(正式には禁酒キャンペーン)が出た。 「アルコールによって国民が侵され、国の生産力がそがれている」 との理由からだ。オフィシャルには店頭から酒が消えた。それと同時に、密造酒がロシア社会に出回るようになった。この動きに対して、政府はメディアを使って密造酒工場の摘発に努めたのだが、これが逆効果。テレビ画面には、密造酒生産の簡単な設備が映し出される。 「家庭にあるこんな日常の道具だけで酒が作れるんだ」。 市民を逆に啓蒙 (?) してしまった。
ロシア人は酒好きとのイメージが強い。過酷な寒い環境の中、身体を温めるには酒が欠かせないという言い訳をよくきく。かつて国教を定めようとしたとき、イスラムやらキリスト教の布教者たちがロシアにやってきた。結果的にロシアがイスラム教を採用しなかった理由は、飲酒を認めるか認めないかの選択が大きな判断材料となったといわれている。理由はともあれ、酒好きの講釈。飲めば人生楽しい、それでいい。ロシア人にはかような DNA が備わっている。
ロシア人の愛するウォトカ。基本的にはアルコール度数は40度と定められている。この40度こそが 「最も美味しいアルコール度数の比率である」 と宣言した人、それは元素周期表を作ったことで有名なロシアの化学者、メンデレーエフ博士である。彼が度量衡局の局長に就任しウォトカ製造技術の確立に努めていたとき、「ウォトカの黄金比は40%」 にたどりついたという話は有名である。 「ウォトカは40%のアルコールを含むものとする」 との法律が、19世紀後半に作られたらしい。
話を最初に戻すが、ロシアの国民ひとり当たりの年間飲酒量は純アルコール換算で 18リットル (ウォトカ50本相当)と世界最多らしい。それを思えば、日本国内の酒類市場が少子化で縮小する中、日本製の品質と味で巨大市場を酔わせようとする各社の奮闘努力は分かるような気がする。タバコと同様に。


8月
9月にモスクワで開かれる予定だった米ロ首脳会談が見送られた。アメリカが身柄の引き渡しを求めていた米情報機関の活動を暴露したCIA元職員、スノーデン容疑者の一時亡命をロシア側が認めたことへの事実上の対抗措置との見方が強い。ただ、オバマ氏大統領は 9月5、6日にロシアのサンクトペテルブルクで開く G20首脳会議には出席するという。 一方この日程の中で、日ロ首脳会談が行われる。
米ロ首脳会談では、シリア情勢、イランの核開発問題、北朝鮮への対処、アメリカの進める欧州へのミサイル防衛 (MD)システムの配備問題、そして世界中が注目する戦略核弾頭の配備数の削減……など重要課題を多岐に渡って話し合うことになっていた。表向きはスノーデン・ケースが首脳会談を阻害したことになっているが、特にシリア情勢、MDシステム配備に進展が望めないとのことで、「交渉しない」 ことを双方が合意したのではないか。 交渉しないことも交渉術のひとつである。
日頃から外国と交渉する機会が少なからずあるため、たまに交渉とは何かと考えたりする。どこの国との交渉も大変だが、特にキリスト教文化圏に属する相手国とのそれは、日本人にとって最も厄介ではないかと思う。というのは、彼らの信仰する神は絶対で、唯一の存在であり、そしてその神は嫉妬深く、怒り狂うことに特色があるからだ。 聖書を読むとよく分かる。そしてこの神は、世界は自分が創造したものだから、自らの意思で壊してもいいし、人類を殺めても構わないと考えている。
その証左を挙げると、地上の人類の業に怒りを覚えた神は大洪水を起こし、「神に従う無垢な人」 ノアに巨大な箱舟を作らせ、全ての動物の雄、雌一組ずつ箱舟に乗せて、来るべき日に備えた、ということ。 自分の意に沿わないことやものに対しては、徹底的に攻撃を加え、それによって利益を生み出そうとした。交渉の技術とは戦うことに尽きるという彼らの考え方は、相手の主張や意図を正しく理解し把握した後、お互いに問題解決を図ろうとする私たちとは大違いである。八百万の神、祖先を敬い崇める精神が自然と備わっている日本人にとっては、かような文化や習慣の大きく異なる相手と交渉することは容易ではないとすぐ知れる。

閑話休題。今回芥川賞を受賞した藤野可織の作品 「爪と目」 は珍しく二人称小説である。 「あなた」 が頻発され戸惑いを誘発するが、人任せしている感は不快ではなかった。人体の表面に剥き出しになっている爪と目は、「爪を剥ぐ」 とか 「目を潰す」 とか、少々おどろおどろしい表現がつきまとう身体の一部である。直截的な表現は避けられているが、爪と目にまつわる表現の中に寒気を感じた。
一人称小説は語り手の意思を詳しく表現できる。三人称小説は読者の視点は、神様視点になる。二人称小説は難しいが、それが成功すれば、読者自身が物語の世界に存在しているような感覚が与えられることにつながる。交渉もそのように二人称的に行えればと思うのだが、それは無理だろうな。


アムール川の洪水
ロシア極東や中国東北部で今月10日ごろから断続的に続く大雨の影響でアムール川の水位が上昇し、支流で洪水が発生、住宅地や農地で大きな被害が出ている。ハバロフスク市ではアムール川の水位が過去最高を更新し、市街地への深刻な被害も懸念されている。ハバロフスク市内にあるレーニンスタジアムは、あたかもプールのような状態であり、地元のサッカーチーム “SKAエネルギヤ” のゲームも当然中止になった。 28日現在、水位はピークを迎え(ハバロフスク近くの水位は736cmで史上最高を更新中)、今後収束するとの見通しであるが、予断は許さない。農業の盛んなアムール州では農地の40%が浸水する等、極東連邦管区全体で約86億ルーブル(約258億円)の農業被害が出るとみられており、また冬を迎えるまでに住宅や社会インフラの復旧作業を終える必要性が出てきている。
ロシア極東で被害のあった場所は、アムール州、ユダヤ自治州、ハバロフスク地方などで、その被害総額は約300億ルーブル(約900億円)、罹災地は190にも上り、10,000人の被災者を生んでいる。
この影響はロシア極東のみならず、中国東北部の黒龍江省などにも及び、黒龍江、松花江流域で警戒水位を超える大洪水が発生している。上流での降雨により、国境を接する中国とロシア両方のダムで放流が行われているため、河川の水位が上昇し続けている。この現象について、中ロ双方とも相手側国のダムの放水が被害拡大の原因であると非難し合っているとの報道もあって、国境を接する河川を巡るこの度の災害は、その対応の難しさを露呈している。中国東北部での洪水による被災者の数はまだはっきりしないようだが、350万人とも言われている。
今年は世界中で大雨による河川氾濫などの被害が目立つ。日本も同様であるが、今春のヨーロッパでも大きな被害が起きた。経済的損失も大きかったという。
今回のアムール川の洪水が、木材産業にどのような影響を与えるかは、まだはっきりしないが、少なくとも山元からの原材料の搬出等には影響はあるだろう。今後ともその推移を見守ることが求められる。



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